万引き対策等による商品ロスを防止する私服による店内保安警備の専門会社株式会社 日本保安(千葉県千葉市中央区)

店舗お役立ち情報

第10話:店舗で行う具体的「商品ロス削減策-④」

 2017/09/26

 秋に入り商品動向も盛り上がってくる季節になって参りました。個人的にはこの季節になるとプロ野球の動向からセールがどのように展開するかが気にかかります。ある種の職業病でしょうか…

 また、政治情勢が大きな動きを見せる中、10月後半(現時点では22日あたりが有力でしょうか?)の日曜日のお客様動向がどのように変化するかも気にかかる所です。扱い商材が衣服などの場合は、秋のピークの商品動向次第で冬に向けた商品回転に大きな影響を及ぼします。

 変化という事でいうと、最近は人材育成について活発になっている事を感じます。労働人口の減少(人口減少、少子高齢化など)の影響も受け、有効求人倍率がバブル期を超え、過去最高を記録する中、採用環境が厳しさを増しています。その為、既存メンバーの活性化がより重要度を増し、若手メンバーの定着、戦力化を課題として捉えるケースが増加傾向にあります。いち早く人材育成を進め、メンバーのやりがいを創出し、従業員満足度の向上に努める取組が、働くメンバー同士や地域での口コミを産み、仲間を確保しやすくなるスパイラルアップを生み出す事がはっきりしてきた事もあるでしょう。

 小売業専門紙の食品商業でも1年目社員のスキルチェックという特集が組まれ、私も執筆に加わりました。

 ※ご興味ございましたら是非ご覧ください   
  →食品商業10月号リンク

 小売業の場合、店舗に入ってしまうとOff-JTによる集合研修等がなかなかできない事もあり、どうしても現場で、しかも体で学ぶとスタイルの偏りがちです。私自身も現場でも、本部でも、OJT+自力で学んできました。だからこそではないですが、少しでも、理論や知識を教えて貰える機会を得た時は大きな前進がありました。特に若い年代(まだ自分で啓発活動の組み立てができない段階)では、基礎学習や、キャリアプランをもって、狙いすましてスキルアップをしていく計画を持つだけで、成長スピードは全く異なります。経験を積みつつ、バランスの良く理論を補完することで、早期にやりがいを感じ取れるよう、仕組みを持って育成をする事が組織の成長にも直結します。育成の仕組みを構築できている組織は強い組織に繋がりますので、積極的なアプローチをおすすめいたします。

 さて、前置きが長くなりしたが、ここからが本題です。商品ロス削減の具体策をテーマにした4回目となります。

 前回第9話から20坪から50坪程度のショッピングセンター内のショップをイメージして商品ロス対策の話を致しました。テーマは以下の2点です。

1:客導線を分析する。

2:平面図から死角の位置を分析する。

 ショップの場合、ワンフロアの面積が大きな店舗と異なり、少人数で小面積を…という展開となり、よりきめ細かな対策(プランニング)をすることが必要となります。立案手順1として、まず初めに「客動線→客導線」を明確にします。

まずは「動」です。自然な状態でお客様がどちらの方向から入ってくるかを把握します。自動車、自転車、徒歩、バス、電車など来店手段によっても買い方が変わりますのでどの入り口からどのように入ってきたお客様がどちらからお店に入ってくるかという視点で考えます。

 次は「導」です。お店に来て下さるお客様、また入店してくれたお客様を意識的にどのようなルートを歩いてもらうかを考え、導くルートを計画します。つまりVMDですね。

 次に立案手順2です。平面図を用いて死角を分析します。お客様が、どちらから入店され、またお店側としてどのように導くのかを設定すると、お客様の視界、また従業員が滞留する場所(レジや主要な作業場所)からどのような視界が開けているかがわかります。これを分析していくと、柱面、壁面、高めの什器、レジの角度、様々な状況から販売員さんがその場所からでは見切れない死角を抽出する事ができます。(死角はないという場合も稀にありますのでその際は接客体制を深堀して設計する事になります。)

  前回の9話でここまで到達しています。

 

 今回10話は3、4についてをお伝えしていきます。以下2項目となります。

3:有効なポジションを探索する。
4:人員配置と連動させる。

 では立案手順3、「有効なポジションの探索」に入ります。開店時や改装時の内装設計や什器レイアウトを設定する際、基本的には商品分類を売場の展開分類に落とし込んでいきます。品揃え計画にあったフェイス数を確保し、VMDプランを作成していく為、いかに販売するかを主眼に考えていくケースが殆どです。ある意味そこが本質ですので当然でもあります。一方であとから防犯設備(カメラ)などを付け足していくケースが多いのも実態です。

 本来であればコンカレントエンジニアリング(複数の工程を同時進行するスタイル。このケースでは、コンセプトを軸に関係者が一斉に意見交換し、攻防一体型で議論し、それぞれの担当毎のプランを最適化し統合型のマネジメントで業務を進行させる事を指しています。)での進行が望ましい中、実態は川上部門から先に業務を行い、メドがついたら次の部門へと、リレー型で行っているケースが多いのではないでしょうか。その結果、販売するという目的から遠いものほど、後から付け足す形式となり、防犯対策等は後回しになりがちです。その為、こんなことしたら万引きの巣窟になるぞ…というレイアウトの店舗も実在します。坪数に対し、品揃えを強化したかった…という気持ちが良く分かる形になっており、「お気持ちはお察ししますが、貴店はサッカーに例えるとフォワードだけのチーム、野球でいえば全員が内野に集まっており、外野に誰もいない…といった偏った状況になっていますよ…」という状況のお店です。万引きで困っているという店にある問題点の1つです。

 この対策として、販売員のポジショニングの修正が有効となります。実際に死角をなくすように、販売員の店舗内での滞留場所を修正し、3名体制の時は、A地点とB地点とC地点の3箇所を拠点へ、それぞれの視界を、A地点は●方向、B地点は▲方向、C地点は★方向と基本設定をしていきます。レジを動かすのは困難でしょうから、それ以外の滞留箇所を平面図の分析から論理的に設定をしていきます。

 無意識にお客様の動きにつられて動いているケースや、設備上作業がしやすい場所(土台になるものがある場所)で仕事をしている場合が多いのが実態です。この状況を、死角をなくす為の「ポジション」と「視野」を意識的に設定していく事で隙をなくし、お客様の動きをグリップすることで接客の効能も高めていきます。攻防一体型の販売員配置です。

 

 仕上げの立案手順4は人員配置との連動です。時間帯別のお客様の動きが変わる店舗、またどの店でも人員配置上は時間帯毎にスタッフの人数が変動するはすです。それには合わせて配置プランを柔軟に対応していく為の、バリエーションを作っていきます。

 

【 基本プラン 】:3名体制 A地点●方向視野・B地点▲方向視野・C地点★方向視野

時間帯別客導線

3人体制

2人体制

1人体制

10:00~12:00

 

 

 

12:00~17:00

 

 

 

17:00~20:00

 

 

 

20:00~22:00

 

 

 

 

 こんな感じで接客販売体制の基本形+バリエーションを平面図に落とし込んだものを作成し、今はどの状況かを勤務しているメンバーが判断し、最適な動きをしていくよう推進していきます。

 

 この状況で、What(何を)How(どのように)が明確になりました。1~4の分析や立案をする事で、指示を出す側としては、こうして欲しいという指示をだせるようになりました。

 一方で、メンバーが実際にこれに沿って実践してくれるかどうかは別問題です。自律的な行動を促す為には、何故こういった活動を行うのか=Why(何故)をしっかりと伝える事が重要です。

 お客様の立場から考えると、万引き等の被害を防止し、余計なコストを出さない事で、適正な利益を創出し、再投資を行い、お客様により快適なお買い物を楽しんでいただけるようなお店にしていく活動が不可欠です。一部の悪意のある存在による被害をうける事で結果的にそのコストをお客様に負担して頂いていることになり、万引防止を行わない事はお客様に不都合な結果となります。

 これを従業員そのものに置き換えれば、利益がでなければ賃金もあがりませんし、職場環境をよくする投資も、やりがいのある店舗環境投資にも回せません。

 企業側の目線で、株主対応の為にも、利益予算をクリアしなければならない…といった言い回しは、管理職レベルでは理解し、受け入れられますが、現場の販売員には響きにくいので、お客様満足目線と、従業員満足目線を中心に、「Why:何故」を伝え、自ら考え行動できる基軸をもってもらう事が重要です。

 少しずつ、メンバーに本質理解を促し、攻防一体型のアクションに繋げていきましょう。

 

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

【 筆者プロフィール 】

株式会社 せんだ兄弟社 代表取締役  専田 政樹(HP https://kyodaisha.com)
株式会社 日本保安 店舗支援PJ担当シニアコンサルタント
学校法人 産業能率大学総合研究所 兼任講師
一般社団法人 日本ダイバーシティ・マネジメント推進機構認定 ダイバーシティコンサルタント
一般社団法人 インターナショナルバリューマネジメント協会 理事

7&iグループ出身、小売業歴20年の中小企業診断士
 店舗運営管理、販売スタッフ教育等を経験後、グループ内事業会社へ転籍し、小売業から製造小売業への転換を目指す新商品開発部門でSV、VMD、マーケティング、プロモーション企画等を担当し、外部専門職のマネジメント業務等に従事。その後、管理部門の責任者を務め、営業利益▲3%から、1年で+0.5%に改善した実績を持つ。

「次代を担う子供たちに【明るい未来】と【豊かな社会】を託す」事を志に独立開業。2017年3月、企業の人に関する支援を行う㈱せんだ兄弟社を設立。組織人事、各種制度構築、業務改善、人材育成などを事業領域として活動中。

→プロフィール詳細

https://www.nihon-hoan.co.jp/column/2017/04/%E2%96%A0%E5%9F%B7%E7%AD%86%

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////